2008年12月27日土曜日

ピアノ

POD CASTで聴くワールドニュース第29回。 

年の瀬ということもあり、 
英米加のPodCastのニュースも、 
日本と同様、 
「2008年を振り返る」や「トップニュースベスト10」といった、 
総まとめシリーズばかりとなっています。 

今回のネタもそんな総まとめから。 
中国でのピアノに関するお話。 

英BBC From Our Own Correspondent から。 


'Piano Rehabilitation' 


かつて中国では憎悪の対象のような存在であったピアノ。 
しかし、今はこのように思う人はもちろんおらず、 
国中で多くの子供がピアノを普通に習っている。 

数十年前の、いわゆる「文化大革命」のとき、 
中国では、西洋音楽の楽器の中でも、 
ピアノが特に「危険」な楽器とされていた。 
「黒い棺」と例えられたり、 
西洋拝金主義者・大金持ち達の骨でできているとか 
言われたりしていた・・・ 

BBCの記者が中国でピアノについて取材をした。 

記者は、あるホテルで、ルー・シュクンさんと出会った。 
背が高く、上品な感じの男性である。 
1948年、まだ19歳の時、 
彼はモスクワで開催された、 
チャイコフスキー音楽コンクールで準優勝した。 
プロのピアノ演奏家への登竜門とされているコンクールである。 
当時、中国の音楽家が世界的な賞をもらうということは非常に珍しく、 
故郷の中国へ凱旋すると、国民から英雄のような待遇を受けた。 
当時の最高権力者、毛沢東の前でもピアノの演奏をする機会を与えられた。 

しかし、それから20年もしないうちに、状況は一変する。 
時代は「文化大革命」のさなか。 
西洋の文化が中国を腐敗させるという、 
西洋文化排斥運動が盛んとなっていた。 
多くの西洋の国々へ行ったこと、 
バッハやベートーベンやモーツァルトの音楽をピアノで演奏していたということから、 
ルー・シュンクさんは、国家の敵とみなされるようになっていた。 
「革命に反する修正社会主義者」と言われ、ひどい扱いを受けたのである。 
音楽家としての活動はできなくなり、 
仕事は、トイレ掃除のようなものしかできなくなった。 
さらに、北京のタイチェン刑務所で、毎日腐りかけの食事を与えられながら、 
6年間も拘留された。 

69歳となった今、ルーさんは、かつてのように音楽活動に専念する。 
毛沢東の文化大革命の名の下に人権を無視した扱いを受けたこと、 
そして、他にも様々な圧政を受けた80年代の歴史の記憶を忘れないよう、 
次の世代へ伝える活動をしながら。 
しかし、過去にこだわるばかりではない。 
中国各地で「ピアノ幼稚園」を開き、 
未来の音楽家の養成にも精を出す。 
多くの親が彼のピアノ教室へ子供を通わせる。 
子どもたちはそこで音楽だけでなく、国語や算数、体育の授業も受ける。 

あるピアノ屋さんで、ある工場労働者と出会った。 
彼は、10歳になる自分の娘にピアノを習わせているという。 
ピアノを通して、娘の精神的な成長を期待している。 
彼の奥さんも、ピアノの訓練が娘に高い集中力を持たせると言う。 
ある中国の音楽大学の教授がによると、 
ピアノの演奏には、 
中国の人々が古来から持つ価値観と通じるところがあると話す。 
多くの親が、この言葉を信じ、子供にピアノを習わせる。 
「ピアノを習う子供は、いい大人になる」 

(BBC From Our Own Correspondent December 27 配信分より) 


大学時代のことですが、 
「レッドバイオリン」という映画を見ました。 
この映画の中で、中国の文化大革命時に、 
多くの民衆が「西洋文化が中国を滅ぼす」と、 
自国文化高揚運動をしている場面がありました。 
西洋音楽楽器であるバイオリンも排斥の対象となり、 
ある女性が子供の頃に母からもらった大切なバイオリンをなんとか守ろうと、 
奔走している場面がありました。 
このPODCASTの話を聴いて、 
この映画のことを思い出しました。 

チベット弾圧、四川省での大地震、オリンピック開催など、 
大きな話題に事欠かなかった2008年の中国。 
また、これらの事件やイベントを通じ、 
民主化への道が徐々に開かれた年であったともいわれます。 
しかし、中国の民主化プロセスを一番はっきり表すのは、 
このピアノではないかとこの記事を聴いて思いました。 
ピアノを通じ、中国という一党独裁政権国家が、 
さらに世界へ開かれた国へとなることを願うばかりです。 

ちなみに、「レッドバイオリン」は、好きな映画の一つです。 
まだご覧になったことがない方は、ぜひ見てみてください。 
おもろいです。 

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