POD CASTで聴くワールドニュース第23回。
この間のGuardian Weekly Pod Castのニュースで、
日本の出生率低下に関する特集放送がありました。
「日本の労働者は働きすぎ。
配偶者を見つける時間もなく、
見つけても、夫婦で一緒に過ごす時間をほとんど持てない人が多い。
企業は、残業を減らし、社員が自分の時間をもっと持てるようにすべきだ」
とあるイギリス人コメンテーターが言っていました。
しかし、この自分の時間をもっと持てるということが
現実のものとなるかもしれません。
最近の、金融危機による、特に自動車業界に多く見られる、
非正規雇用者リストラの動き。
正社員にも、残業を減らすよう命じる会社が増えてくるなど、
正規労働者にもリストラの波が
押し寄せてくるのではという風潮が見られます。
今の日本の失業率が4%台。
この数字が5%や6%台に上る可能性も否めないところだと思います。
しかし、この世界的金融危機による失業危機の時代にも、
失業率がわずか1%代を維持している国があります。
デンマークです。
ノルウェーやフィンランドなど、北欧の国は福祉の先進国と言われ、
中でもデンマークは雇用に関して手厚い策を政府がとっています。
この、EU内でいちばん失業率が低く、
多くの国がその政策を研究するデンマークでの
労働福祉政策に関するリポートがありましたので、
取り上げさせていただきました。
英BBC News Pod から。
ちょい長いです。
'Flex-Security'
ヨーロッパで失業率の一番低い国デンマーク。
イギリスをはじめ、多くの国が、この国の雇用政策に注目している。
BBCの記者が首都コペンハーゲンで取材した。
デンマークで労働者を解雇するのは、
他のヨーロッパの国々同様、簡単ではない。
しかし、実際に職を失ってしまった場合、
失業保険として、
毎月£1,600(約22万6千円)もらい続けることができる。
これは、世界でもトップレベルの金額。
ただし、もらい続けるには、ある条件がある。
失業者は、国の職業訓練対策に参加しなければならないのだ。
しかし、この失業者らが無料で参加できる職業訓練プログラムこそが、
デンマークの失業率を低く抑える秘訣なのだ。
職業支援訓練係として働くハンソンさんに話を伺った。
「失業者が特別なスキルを得るための訓練や、
ビジネスマンとしてのマナーを学ぶ講座などを担当しています。
ときには、アルコール中毒者の治療にも参加します。
訓練施設には、運動場もあり、
ここでメンタルヘルス対策や、
体重を減らすためのトレーニングなどもできるのです」
この施設で、他の業種でもすぐに即戦力として仕事を始められる人材になれるよう、
綿密にプログラムされた訓練を受けられるのだ。
ただ、この訓練施設で訓練を終え、
いざ企業への就職面接の際に現れなかったり、
1年に2度以上会社を辞めた人は、
この職業訓練プログラムには参加できなくなる。
ハンソンさん「訓練を受けたからには、きちんと社会に出て
働いてもらわなければなりません。
そうでなければ、当然制裁があります。
企業はどんどん技術力の高い労働者を求めて来ています。
我々もその要求にこたえられるよう、
レベルの高い職業訓練プログラムの提供に努めています」
イラク出身のアラ・フセインさん。
デンマーク国籍を取得した、
資格も持つ技術者である。
彼も職業訓練プログラムを受けている。
デンマークの企業風土や労働習慣などに
すぐに溶け込めるようにするためだ。
来週から会社勤めとなる予定。
フセインさん「どのようにデンマークの人々とコミュニケーションをとって
うまく溶け込んで働けるようになるか、
新人がどうやって会社の風土に馴染めるようになるか、
そんなことを教わってきました」
このような職業訓練プログラムのおかげで、
デンマークはEUの中で失業率は最も低い。
1%代である。
そしてもちろん、
デンマーク政府はこのプログラムに多大なお金をかけている。
毎年の歳入のうち4,5%もの額のお金を福祉に費やしている。
ちなみにイギリスは1%。
福祉政策に非常にお金がかかっている。
そしてそれゆえに、政府のこの政策を批判する人も多い。
「このような労働市場におけるセーフティーネットの過度な充実は、
就職するために自ら努力をしようとするという
インセンティヴを奪ってしまうことになりかねない。
いわゆる一種のモラルハザードだ。
まず失業中の手厚すぎる給付金を減らすことは必要であると思う」
デンマークのシンクタンクで働くルービンさんはこう述べる。
デンマークの労働者たちは、
政府の職業訓練システムなどの手厚い失業対策に「甘やか」され、
一生懸命職探しをしよう、
職に就けるよう自ら研鑽しようという意思を
なくしてしまっていると彼は考えている。
一方このシステムを支持する労働大臣、
フレデリックソンさんはこう述べる。
「この職業訓練システムを通し、
多くの人々が様々なスキルを身につけ、
労働市場で価値ある人材として巣立っていった。
他のどんな国にもないシステムだ。
もちろん、非常にお金はかかる。
しかし、目に見えていい結果が出ている」
ある労働者がまったく別の業種へ移って働くというのは、
ここデンマーク以外では非常に難しいことであろう。
これほど労働者を手厚く保護・支援・訓練する政策をとるのは非常に難しく、
他の国はこれをただ参考にしたり、
一部のシステムを取り入れてみるだけというのが現状である。
(BBC News Pod December 3 配信分より)
社会福祉政策が非常に進んでいるデンマーク。
この職業訓練システムは、
日本も見習うべき点が大いにあるかもしれません。
以前総理大臣だった安倍氏が「再チャレンジできる社会」
という発言をしていましたが、
デンマークで実施されているこのシステムにより
まさしくこれが実現されていると思います。
ただ、これだけの社会福祉システムを実施するための財源が
どこにあるかと聞かれれば、
答えられる人はいないというのが現状だと思いますが…
実施するには大増税は免れないでしょう。
実際、デンマークの労働者は、
給料の約半分が税金などで消えてしまうと言います。
しかし、生活に困るということはないようですが。
日本では、20代前半にある企業に就職し、
転職せずに一生そこで働き続けるのが
給料面や福利厚生面などで1番メリットが大きいと
言う専門家が未だに多くいます。
長く続いてきた年功序列や終身雇用システムの名残でしょう。
一方、デンマークでは、労働者の平均転職回数は、
生涯で6回。
中には、50回も転職を繰り返した人もいるといいます。
また、平均勤続年数も約8.3年だそうです。
これは上記の失業中の手厚い(手厚過ぎるほどの)金銭支援や、
職業訓練システムなど、
失業者を放置しない政策による結果であると思われます。
このような状況を良いと思うか、
それとも日本の伝統的な雇用態勢に合いかねるので
ただ参考とするのにとどめるべきか。
政治家の皆さんにじっくり考えてほしいところです。
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