2008年12月27日土曜日

ピアノ

POD CASTで聴くワールドニュース第29回。 

年の瀬ということもあり、 
英米加のPodCastのニュースも、 
日本と同様、 
「2008年を振り返る」や「トップニュースベスト10」といった、 
総まとめシリーズばかりとなっています。 

今回のネタもそんな総まとめから。 
中国でのピアノに関するお話。 

英BBC From Our Own Correspondent から。 


'Piano Rehabilitation' 


かつて中国では憎悪の対象のような存在であったピアノ。 
しかし、今はこのように思う人はもちろんおらず、 
国中で多くの子供がピアノを普通に習っている。 

数十年前の、いわゆる「文化大革命」のとき、 
中国では、西洋音楽の楽器の中でも、 
ピアノが特に「危険」な楽器とされていた。 
「黒い棺」と例えられたり、 
西洋拝金主義者・大金持ち達の骨でできているとか 
言われたりしていた・・・ 

BBCの記者が中国でピアノについて取材をした。 

記者は、あるホテルで、ルー・シュクンさんと出会った。 
背が高く、上品な感じの男性である。 
1948年、まだ19歳の時、 
彼はモスクワで開催された、 
チャイコフスキー音楽コンクールで準優勝した。 
プロのピアノ演奏家への登竜門とされているコンクールである。 
当時、中国の音楽家が世界的な賞をもらうということは非常に珍しく、 
故郷の中国へ凱旋すると、国民から英雄のような待遇を受けた。 
当時の最高権力者、毛沢東の前でもピアノの演奏をする機会を与えられた。 

しかし、それから20年もしないうちに、状況は一変する。 
時代は「文化大革命」のさなか。 
西洋の文化が中国を腐敗させるという、 
西洋文化排斥運動が盛んとなっていた。 
多くの西洋の国々へ行ったこと、 
バッハやベートーベンやモーツァルトの音楽をピアノで演奏していたということから、 
ルー・シュンクさんは、国家の敵とみなされるようになっていた。 
「革命に反する修正社会主義者」と言われ、ひどい扱いを受けたのである。 
音楽家としての活動はできなくなり、 
仕事は、トイレ掃除のようなものしかできなくなった。 
さらに、北京のタイチェン刑務所で、毎日腐りかけの食事を与えられながら、 
6年間も拘留された。 

69歳となった今、ルーさんは、かつてのように音楽活動に専念する。 
毛沢東の文化大革命の名の下に人権を無視した扱いを受けたこと、 
そして、他にも様々な圧政を受けた80年代の歴史の記憶を忘れないよう、 
次の世代へ伝える活動をしながら。 
しかし、過去にこだわるばかりではない。 
中国各地で「ピアノ幼稚園」を開き、 
未来の音楽家の養成にも精を出す。 
多くの親が彼のピアノ教室へ子供を通わせる。 
子どもたちはそこで音楽だけでなく、国語や算数、体育の授業も受ける。 

あるピアノ屋さんで、ある工場労働者と出会った。 
彼は、10歳になる自分の娘にピアノを習わせているという。 
ピアノを通して、娘の精神的な成長を期待している。 
彼の奥さんも、ピアノの訓練が娘に高い集中力を持たせると言う。 
ある中国の音楽大学の教授がによると、 
ピアノの演奏には、 
中国の人々が古来から持つ価値観と通じるところがあると話す。 
多くの親が、この言葉を信じ、子供にピアノを習わせる。 
「ピアノを習う子供は、いい大人になる」 

(BBC From Our Own Correspondent December 27 配信分より) 


大学時代のことですが、 
「レッドバイオリン」という映画を見ました。 
この映画の中で、中国の文化大革命時に、 
多くの民衆が「西洋文化が中国を滅ぼす」と、 
自国文化高揚運動をしている場面がありました。 
西洋音楽楽器であるバイオリンも排斥の対象となり、 
ある女性が子供の頃に母からもらった大切なバイオリンをなんとか守ろうと、 
奔走している場面がありました。 
このPODCASTの話を聴いて、 
この映画のことを思い出しました。 

チベット弾圧、四川省での大地震、オリンピック開催など、 
大きな話題に事欠かなかった2008年の中国。 
また、これらの事件やイベントを通じ、 
民主化への道が徐々に開かれた年であったともいわれます。 
しかし、中国の民主化プロセスを一番はっきり表すのは、 
このピアノではないかとこの記事を聴いて思いました。 
ピアノを通じ、中国という一党独裁政権国家が、 
さらに世界へ開かれた国へとなることを願うばかりです。 

ちなみに、「レッドバイオリン」は、好きな映画の一つです。 
まだご覧になったことがない方は、ぜひ見てみてください。 
おもろいです。 

2008年12月23日火曜日

スリランカと星占い

pod castで聴くワールドニュース 第28回。 


今日のBBCのPodCastで、 
トヨタの業績赤字がトップニュースで放送されていました。 
『昨年度は最高益をあげた'Mighty TOYOTA(完全無欠のトヨタ)'が 
戦後初の赤字に陥る。 
急激な円高の影響で、他の輸出に頼る日本企業も危ない。 
日銀が政策金利を0.1パーセントに下げたが、 
効果は限定的だ』 
とキャスターが話していました。 

非正規労働者の解雇や、 
彼らの多くが住んでいた会社の寮を追い出され、 
住む場もない人も出てきているという内容のリポートもありました。 

日本の代表企業であるトヨタの業績悪化が、 
日本経済の後退入りを示しているとの印象を、 
他国にも与えてしまっているようです。 

暗い話から始まりましたが、 
気にせず行きましょう~ 

今回は、スリランカから、占星術の話題です。 


'Horoscope in Sri Lanka' 


天の星によって結婚相手が決まる・・・ 
あなたならこんな制度どう思いますか? 
占星術が強く信じられている国、スリランカ。 
インドの東側にある島国。 
ここでは、「星が決めた結婚」が普通に執り行われる。 
どんな会社に転職するかも、いつ外出すれば安心かということも、 
星占い次第で決めてしまう。 
政治家までが星占いに頼っている。 
いったいどういうことなのか? 

BBCの記者がスリランカで取材した。 

私はある結婚式に招待され、今式場に来ている。 
新郎・新婦が、伝統的な儀式の音楽の演奏の中、 
ヒンドゥー教の神の装飾に彩られた 
ステージのイスに座っている。 
ヒンドゥー教の祈祷師たちが、 
彼らを祝福する儀式を行っている。 

実は彼らはの結婚は、お見合い結婚(arranged marriage)である。 
占星術がこの結婚の決め手となった。 
新郎のジェン・ルービンさんと、新婦のウーマ・ランジェニーさんが 
お互いにふさわしい相手であると、「星」が決めたのである。 

新郎さんにインタビューしてみた。 
記者「星占いによってパートナーが決められたことについてどう思いますか?」 
新郎ジェンさん「今回の結婚は星占いによると 
85パーセントの確率でうまくいくと出た。 
お互いにうれしいし、実際うまくやっていけると思う」 
記者「星占いが当たっていなければ、 
つまり奥さんとうまくやっていけないということになれば、 
どうしますか?」 
新郎ジェンさん「また別の女性を探します(!)」 

私はある占星術師のもとにやってきた。 
彼は伝統的な衣装に身を包み、 
金のネックレスを首にかけ、 
ダイヤのついたイアリングをしている。 

ある家族がこの占星術師のもとを訪れていた。 
息子が結婚を予定しているのだそう。 
占星術師は、この家族の生まれた星の位置を調べた上で、 
息子と嫁候補の女性と、性格や体質、 
気質などが合うかどうか検討し始めた。 

詳しく話を伺った。 
占星術師「80パーセントの確率で、 
お互いに良きパートナーとなれるでしょう」 
記者「星占いで良い結果が出たと言うことですか?」 
占星術師「80パーセントというのは、とても良い結果です」 
記者「息子さん、この結果どう思いますか?」 
結婚予定の息子「うれしい結果です」 

ここに、ある人の占星術の表がある。 
表紙には、ヒンドゥー教の神の絵が描かれており、 
中には、その人の健康状態、生まれた日時などの記録がある。 
このような占星術の表は、 
生まれたときから記録票のようなものとして作られ、 
ずっと持っているのだという。 
そして、星占いをする際に、 
占星術師に見せる「人生の記録の資料」として使うのだという。 

また、結婚以外にも、人々は占星術に頼る。 
新たに仕事を始めようとする人は、 
いつから始めるのが適切か、助言を占星術師に請い、 
それに従う。 

政治家も例外ではない。 
彼らは、選挙をいつにするかということや、 
どのタイミングで家を出れば、 
選挙で良い結果が出るかなどということを 
占星術師に占ってもらうのだという。 

ここで再び冒頭の新郎ジェンさんと新婦ウーマさんの 
結婚式の場面に戻ります。 
彼らは、結婚がうまくいくよう、祈りをささげている最中です。 
彼らは、お互いのことをよく知りません。 
占星術によって知り合っただけの関係だからです。 
しかし、ジェンさんもウーマさんも、 
占星術のおかげで、 
幸せな結婚生活をずっと送れると確信しているのです。

彼らが本当に良き結婚生活を送れるかどうかは、 
まさに「星のみぞ知る」ですが・・・ 


(BBC Global News December 23 配信分より) 


民主国家に住む我々にとって、 
占星術に全てを頼るというのは、 
なかなか考えにくい話ですが。 

ただ、日本にも、いわゆる「占いやさん」は多くありますし、 
それで生計を立てる人がまだたくさんいるということは、 
占いが今の時代でも受け入れられているということなのでしょう。 
やはりある程度宗教的感性、魔術的感性に頼りたいという気持ちが、 
古代・中世・近世に生きた我々の先祖同様、 
現代に住むわたしたちにもにも残っているということなのでしょう。 

かつての中国の皇帝は時に占いによって政治を行っていたといいますし。 

それにしても、上記の新郎さん、ジェンさんは 
「占いが外れたら別の女性を探す」と言ってましたが・・・ 
新婦さんのほうはこの発言を聴いていたのでしょうか? 
スリランカ男性は軽いなーと思ってしまいました。。。 

2008年12月19日金曜日

メキシカン

POD CASTで聴くワールドニュース第27回。 


最近の自動車業界に代表される、減産、減収、人員削減。 
多くの中小企業経営者が年越しできるかどうか気をもんでいる。 
日本の経済状況に危機感を持つのは私だけではないと思います。 

しかし、このような状況にあえぐのは、 
もちろん日本だけではありません。 

今回は、メキシコが受けている金融危機の影響についての 
リポートを見つけたので、 
取り上げさせていただきます。 

メキシコ人の多くは移民として隣国アメリカへ行く。 
このせいで、日本にはない深刻な状況が生まれているようです。 


英BBC News Podから。 


'The Bad Effects on World Migrant Workers' 


アメリカでは、今年、違法侵入者を含め、 
メキシコからの移民が42%も減少した。 

アメリカに住むメキシコ人からの故郷への送金も20%減少した。 

多くのメキシコからの移民がアメリカでの生活に悲観し、 
故郷へと戻ってしまったのだ。 

BBCの記者があるメキシコの小さな村で取材した。 

メキシコ中心部に近いコファディア村。 
つい最近まで、他の多くの村と同様、 
この村でも、働く男の姿はほとんど見られなかった。 
メキシコの村の男性労働者は、 
ほとんどアメリカへ行き、 
仕事にありついていい給料を得るというのが普通だったのだ。 

しかし、今は状況が違っている。 
メキシコの村で、働き盛り世代の男性を見つけるのは、 
難しくない。 
アメリカで職がなくなり、 
故郷の村に戻ってきた男性労働者たちが多くいるのだ。 

アメリカのアラバマで建設会社を営んでいたというある男性。 
アメリカでの経済崩壊や、 
従業員として主に雇っていた移民の相次ぐ帰国で、 
会社が立ち行かなくなり、彼も帰国してきた。 

男性に話を聞いた。 
記者「あなたはアメリカに9年いたのですね。 
メキシコに戻ってきて、今どう感じますか? 
アメリカが恋しいですか?」 
男性「やはりアメリカがいい。 
ビジネスをやるならメキシコよりはアメリカだ」 
記者「村の人は、あなたをどのような目で見ていますか? 
部外者だという目で見られ、疎外感はないですか?」 
男性「そう感じる。村の出身者ではないような扱いを受ける」 

ここ数週間で多くの40以上ものアメリカへ移住していた家族が、 
村へ戻ってきた。 
この男性とその家族もそのうちの一つ。 
地元自治体は、このような「戻ってきた移民」のことで 
頭を悩ませている。 
自治体あるスタッフ「最近本当に多くの移民がアメリカからメキシコに戻ってきた。 
問題は、メキシコにも仕事が豊富でないこと。 
彼らは故郷でも職無しになってしまう」 

職無しだけが問題なのではない。 
アメリカでメキシコ人の移民が減ることは、 
アメリカからのメキシコへの送金が減ることも意味する。 
送金減の影響が特に深刻に表れるのが、 
メキシコに多くある市場(いちば)である。 
果物や野菜などの食物、 
クリスマスの装飾品なども売っているこの市場に、 
多くの人がやってくる。 

市場のあるオレンジ売りの男性は言う。 
「アメリカからの送金が減ったせいで、 
現金を持っている人が少なくなった。 
例年のように商品が売れない」 

メキシコからアメリカへ移住すると言うのは、 
大きな決断。 
しかし、故郷へ戻ってくるのにも、 
困難な生活を覚悟しなければならない。 
メキシコ移民にとって、難しい状況が続いている。 


(BBC News Pod December 19 配信分より) 


アメリカ発の金融危機。 
欧州や日本をはじめ、 
BRICSやVISTAと言われる新興経済国まで 
影響を受けているのは、 
毎日メディアによって伝えられているところ。 

しかし、一番深刻な影響を受けているのは、 
その震源地の真下にあるこのメキシコではないでしょうか。 
夢を持って氏の危険を冒してまでアメリカへ越境したのに、 
不景気で帰らざるを得なくなった。 
さらに、故郷でも部外者のような扱いを受ける。 
このような移民労働者たちは、 
震源地アメリカで金融危機の影響を直接受けた人たち以上の 
困難があるのではないかと感じてしまいます。 

金融危機の収束、世界経済の一刻も早い回復を 
ただひたすた祈るのみです。 

2008年12月15日月曜日

フランス人の労働観

POD CASTで聴くワールドニュース第26回。 


第23回分でデンマークの労働政策に関する話題を 
書かせていただきました。 
で、今回は同じヨーロッパの一国、フランスの労働問題の 
POD CASTを見つけました。 
少し興味深い話題でしたので、 
取り上げさせていただきたいと思います。 


加CBC The World This Weekend より。 


'Keeping A Job or Keeping Days Off ?' 


金融危機のこの時期、多くの国で人々が職にしがみつこうと懸命になっている。 
しかし、フランスでは、多くの労働者は休日を多く保つことに懸命になっている。 
最近、フランスの国会では、 
企業に日曜日の営業を認めるかどうかが議論の的になっている。 
しかし、フランス国会でのこの動きに、 
多くの労働組合や自営業者、 
その他多くの「休日の休息はフランス国民のライフスタイルに欠かせない」 
と信じて疑わない人々が抵抗している。 

CBCの記者のフランスからのリポート。 

私が今いるのは、日曜日のシャンゼリゼ通り。 
多くの観光客や買い物客でにぎわっている。 
しかし、この世界屈指のショッピング通りに並ぶ多くの店は、 
営業していない。閉まっている。 
フランスの法律により、観光スポットにある店や、 
レクレーション施設、文化施設などしか 
日曜日の営業を許されていないのだ。 

2年前、老舗のバッグブランド、ルイ・ヴィトンは 
パリ支店のビルの最上階に美術館を造った。 
理由は、日曜日に営業できるようにするため。 

昨年シラク氏に代わり、フランス大統領に就任した、 
ワーカホリックな新大統領、ニコラ・サルコジ。 
彼は、日曜日に営業できないと言うフランスのこの特異な法律を、 
いつも皮肉っていた。 
サルコジ「シャンゼリゼ通りの一方は、 
観光関連施設があり、 
多くのお店が日曜も営業している。 
しかし、道路を挟んだ反対側の通りは、 
日曜日はほとんどの店が閉まっている。 
滑稽な光景だ。 
観光客も不思議に思うだろう」 

フランス政府は、この現状を変えるために動き出した。 
パリ、リヨン、リール、マルセイユの四大都市に関して、 
全ての店に日曜日の営業許可を与える法律を通そうとしているのだ。 
自営業者や、多くの労働組合は、 
この法律を歓迎していない。 
ある組合のメンバー、シャレーさんはこう話す。 
「全ての店に日曜日の営業許可を与えると言うこの法律には、 
日曜に労働者を雇う金銭的余裕のないちいさな店を潰したいという 
裏の意図が隠されている。 
アメリカのような競争社会にしたいんだ。 
本当にこの法律が通ってしまえば、 
数千人が職を失うだろう」 

この法律に反対の人々は、 
小さな店と雇用を守りたいというだけではない。 
誰もが日曜は休みというこの習慣が好きだと言うのも反対する理由なのだ。 
日曜日は営業許可を与えないと言う100年も前から続くこの制度。 
別に、宗教的理由からこの制度ができたのではない。 
1906年に政教分離政策がとられた際、 
この制度もできた。 
産業革命以来、フランスの労働者は、 
1日12時間労働を、毎日休みもなくこなしていた。 
疲弊しきっていた労働者たちを考慮し、 
日曜は誰もが休みというこの制度ができたのだ。 

この制度のおかげで、 
「ファミリーサンデーランチ」という習慣が広まった。 
日曜は必ず家族みんなで外食に出かけると言う、 
家族団欒の時間である。 

シャンデリゼ通りでタバコをふかしていた60歳のコレットさん。 
彼は、今は時代が変わってしまったと言う。 
コレットさん「『サンデーランチ』をする人は今やいない。 
私はパリの郊外に住んでいるが、 
日曜日は、いつも暇で、一日することがない。 
だから、日曜はパリにやってきて、美術館巡りをする。 
美術館は日曜でも開いているからね。 
美術館巡りついでに、ショッピングでもしたいと思うが、 
お店はほとんど閉まっている」 

政府の商業政策を担当する秘書官、ルーク・シャタルさんはこう語る。 
シャタルさん「この法律は、国民に自由を与えるということなのだ。 
日曜日は誰もが店を開けなければならないと言っているわけではない。 
営業したい人は、やればいいと言うことなのだ」 

再びシャンゼリゼ通り。 
今度は、アパレルショップで働く30歳のケヴィン・ドヴィーさんに 
話を聞いた。 
ドヴィーさん「私には小さい娘がいる。 
日曜日は必ず娘と過ごす。 
このかけがえのない日曜日という休日を、 
働いて過ごすなんて。 
たとえ、給料を多くもらえるとしても日曜日は働きたくない」 

アメリカやイギリスの人々にとっては、 
多く稼ぐために多く働くと言うのが常識だろう。 
しかし、多くのフランスの人々は、 
休日を犠牲にしてまで働くと言うことはおかしいと感じているようだ。 
日曜にすべての店に営業許可を与えると言うこの法律。 
今後の推移を見守っていきたいところである。 


(CBC The World This Weekend December 14 配信分より) 


昨年5月に就任したサルコジ大統領。 
保守主義者、かつ自由主義者とされ、 
さらに親米派の政治家。 
少し前までのアメリカのように、 
規制緩和・自由競争・小さな政府路線をとり、 
フランスの労働者もアメリカの労働者のように、 
仕事に意欲を持たせるようにし、 
競争力のある企業を多く持つ国家にしたいとの意図が見え隠れしています。 

フランス人というのは、「日曜日に働けない」制度がることもあり、 
世界で一番労働時間が短いんだそうです。 
しかし、フランスはG8からロシア、カナダ、イタリアを抜いたG5のメンバーでもあり、 
OECDの加盟国でもあり、 
一流の経済国家です。 
労働時間が短いのになぜこれだけの経済力を保てるのか。 
それは、効率性によるとのことです。 
フランスの労働者は、世界で一番効率のいい働き方をするんだそうです。 
「時間内に仕事を終わらせるにはどうすればよいか」ということを 
常に考え、無駄を省いて省いて仕事に取り組む。 
労働者のこのような姿勢が、短時間労働経済国家につながっているんだそうです。 

一方、ヨーロッパでは「働き蜂」として有名な日本の労働者。 
日本の労働者は、「仕事が多いときは、とりあえず残業して終わらせよう」 
と考える傾向が強いようです。 
仕事量が増える=残業という構造がすぐに思い浮かんでしまうようで、 
なかなか「どうすれば時間内に仕事を終わらせられるか」という 
効率性を考えるところにはいきつかない。 
「一生懸命精を出して働く」のが日本人の美徳の一つであると言うのも 
理由であるかもしれません。 

会社を19年連続の増収増益へ導いたトリンプの社長、吉越浩一郎氏。 
この偉業の秘訣は、「残業ゼロ政策」にあったと言います。 
彼は、「就業時間内の社員の集中力を高めることで 
全社的な仕事の効率が上がり、 
従来以上の価値を生み出す投資になる」 
と「日本の論点」で書いていました。 

長時間労働による自殺者も絶えない日本。 
フランスや吉越さんの考えに基づき、 
働き方を根本的に変えることも考えなければならないと思います。 

ちなみに、約2年前、パリに旅行に行きました。 
確かに日曜は美術館などを除き、 
どこの店もしまっていました。 
確かに不便でしたが、 
「いいなー」と感じてしまいました。 
精神的にゆとりがあると言うか、焦ることのないと言うか、 
そんなライフスタイルを羨ましく思いました… 

2008年12月11日木曜日

こだわりトイレット

POD CASTで聴いたワールドニュース第25回。 


突然ですが、あなたにとってトイレはどんな存在ですか? 
普段何気なく使っているトイレですが、 
海外の目には、 
日本のトイレ、さらに日本国民のトイレに対するこだわりは、 
他に類をみないほどものすごいものであると 
映っているようです。 

イギリスのBBCのPOD CASTのニュースで、 
日本のトイレに関するリポートがありましたので、 
紹介させていただきます。 

海外から日本の文化や考え方がどのように 
見られているかもわかるリポートであると思います。 
少し長いですが・・・ 


英BBC From Our Own Correspondent より 


'A Sophisticated Set Of Luxury Opportunity' 


日本人にとってトイレとは特別な存在。 
彼らにとって、トイレは時に優雅な落ち着きの時間を与えてくれる空間(?!)。 

東京は、世界で最も清潔な都市のひとつ。 
ここではトイレで用をたすということは、 
時に格式高い儀式になる(?!)。 

BBCの記者が東京で取材をした。 

日本人ほど、トイレにこだわり持つ民族はいない。 
温かくなる便座付きのトイレ、ビデつきのトイレ、 
様々なパターンで温水を放出するウォシュレット機能つきのトイレ。 
このような多くのハイテク機能を持ったトイレが 
オフィスビルやデパート、家庭にあるのが当たり前になっている。 

最近、ある多忙なサラリーマンの書いた俳句に似たポエムが多くの人々の心を捕らえた。 
(いわゆる「サラリーマン川柳」のことと思われます) 
'The Only Warm In My Life Is The Toilet Seat' 
(「人生で/温かいのは/便座だけ」といったところでしょうか) 

しかし、日本のトイレは、使用者に「温かい」だけではない。 
驚くようなハイテク機能を備えたトイレがある。 

日本のリーディングカンパニーの一つ、パナソニック。 
BBCの東京支部ビルの近くにある、 
パナソニックの東京ショールームを訪れた。 
航空機のキャビンアテンダントのような衣装に身を包んだ若い女性社員が 
最新機能を持つトイレ製品を案内してくれた。 

人が近づくと、蓋が自動で開く。 
さらに、近付いた人の性別を自動で判断し、 
男性であれば、便座も自動で上がる(!)。 
さらに驚くのは、このトイレに内蔵されているスピーカー。 
便座近くのタッチパネルを操作すると、 
ヒーリング効果のあるようなクラッシック音楽が流れ出す。 
まるで春のうららかな日に小鳥のさえずりを聞きながら、 
トイレで過ごすよう。 

パナソニックのパブリックリレーション部のイシイキョウコさんによると、 
このような多機能のトイレを購入するのは、 
年配の女性が多いという。 
高齢化が進む日本で、 
このような「ハイテク」トイレは、成長の見込める分野であるという。 
イシイさんはさらに、便利さや清潔さを強調することも重要と付け加えた。 
ちなみに、このハイテクトイレは、工事費込みで約30万円。 

日本のトイレに関して、もう一つ驚くことは、 
外国人ではなく、日本人の女性がホテルでトイレの清掃をしていることである。 
先進国では、通常、トイレ掃除のような仕事は、移民が行う。 
しかし、外国人労働者が少ないここ日本。 
移民は全人口のほんの1.5%ほどしかいない。 
ただ、移民が少ないから女性でさえトイレ掃除をせざるを得ないというのは、 
本当の理由ではない。 
日本人にとって、清掃とは、見下されるような、恥ずべき仕事ではない。 
日本では小学生は、放課後に学校内の清掃をし、 
校庭のゴミ拾いをしてから帰宅する。 
タクシードライバーは、勤務後に必ず自分の車を洗ってから帰る。 
レストランでは、食事の前に必ず手を清めるためのお手拭きを出す。 

先日、大阪のある小さな会社を訪ねた。 
社長の杉本氏は、景気後退の波を意識し、 
従業員により一層精を出して働くようせっぱをかけていた。 
社長は営業用に使うプレゼンのスライドを私に見せてくれた。 
その中にあったある1枚の写真が私の心をひきつけた。 
従業員たちが、ひざまづき、便器を清掃している写真である。 
杉本氏は、みんなで清掃するということが、 
従業員の一体感を強めるのに必要だと言う。 

多くの日本人にとって、トイレは、癒しであり、友人であり、 
また、しつけや精神的昇華に必要な存在なのである。 
これだけトイレへのこだわりを持つ民族もなかなか見られないだろう。 


(BBC From Our Own Correspondent November 29 配信分より) 


たしかに、日本のトイレというのは、 
他国のトイレに比べ非常に優れていると思います。 
上記のパナソニック製のトイレは、 
聴いてて正直「本当にこんなトイレあるのか?」 
と思ってしまいました。 
利用者の使いやすさを追求して、とことんこだわる。 
利用者を思いやると言う、日本人の持つ「おもてなし精神」が 
トイレ作りにもあるのでしょう。 
アメリカやイタリアやフランスや中国などに行ったことがありますが、 
トイレといえば、どこも殺風景。 
イタリアでは、公共トイレは有料でしたが、 
日本ほどきれいというわけではありませんでした。 
中国のトイレは…あえて書かないでおきます。 

女性がトイレ掃除をしているのに驚いたと言う箇所は、 
少し意外でした。 
日本では、掃除といえば、躾の面が大きくあると思います。 
自分の部屋や家だけでない、 
みんなが使う公共のスペースをきれにすることの重要さを知ることを通し、 
他人への気遣いや思いやりの持てる人間へ精神的に成長する。 
学校での放課後清掃というのは、このような狙いがあるのではと思います。 
他の国にはないこの掃除-躾の文化。 
大事にしていかなければならないと思います。 

2008年12月7日日曜日

トリュフの問題

Pod Cast聴くワールドニュース第24回。 


以前、トリュフのオークションの話題を書かせていただいたことがありますが、 
今回「トリュフ狩り」を詳しく伝えるリポートを見つけましたので、 
紹介させていただきたいと思います。 


加CBC The World This Weekend より。 


'Diamond Fungus' 


イタリアのタスコニ地方。 
白トリュフのシーズンがやってきた。 
「食の王様」とも言われる白トリュフは、 
地中に育つ「菌類のダイヤモンド」である。 
世界で一番高級な食材の一つ。 
秋から冬にかけてのこの時期、 
世界中から白トリュフを求めて 
このタスコニ地方に「ハンター」が集まる。 
白トリュフを見つけるのは至難の業。 
しかし、年々一層見つけにくくなっているという。 

CBCの記者が取材をした。 

タスコニ地方のある森で 
「トリュフ犬」を連れて白トリュフを探すウルバーノさん。 
68歳の彼は、地元でトリュフハンターのベテランとして知られる。 
トリュフハンター歴48年。 
20歳からやっている。 
ウルバーノさん「祖父が白トリュフのハンターでした。 
父もその影響でハンターとなりました。 
父は私や兄弟にトリュフの話をいつもしていました」 

ウルバーノさんは毎日夜明けの時間から正午まで、 
森に入ってトリュフを探している。 
連れていくトリュフ犬のバッフィーナ君は 
トリュフのにおいをかぎつけるために訓練された犬。 

ウルバーノさん「このトリュフ犬は、 
白トリュフを嗅覚で探し、 
見つけると口にくわえて私の所へ持ってきてくれる。 
一つの白トリュフの大きさはピンポンボールほど。 
とっても優秀なトリュフ犬です」 

ウルバーノさんは、これまで巨大トリュフを見つけた経験がある。 
1984年に700グラムの'monster'トリュフを見つけた。 
その数年後には400グラムの物を発見した。 
ウルバーノさん「巨大白トリュフを見つけた時は、 
神からの贈り物だと感じました。 
それ一つで、一般の労働者の一か月以上の稼ぎになりましたから」 

白トリュフの森から車で少し行ったところにある、 
中世の雰囲気を残す丘の町、サンミニアート。 
ここは、トリュフ市場となっている。 
トリュフ商人のコマ・シャンティさん。 
グラスに入ったトリュフを通行人に売っている。 
小さめのトリュフだと、今年は1kgで約$2,000(約20万円)で 
取引されている。 
発見が難しい大きめのトリュフになると、 
1kg約$3,000。 
これだけの高価な食材。 
いったいどんなお客が買っていくのか。 
トリュフ商人「ほとんどは外国のお客だ。 
中東地域からのお客もいる。 
石油で儲けた『新興成金』のやつらさ」 

しかしそれにしても、 
世界で一番高価なfungus(菌類)であるこの白トリュフの 
魅力は一体何なのか。 
トリュフハンターやその家族で作るある団体のリーダー、 
サルバトーレさんはこう話す。 
「見つけるのが難しいことが何よりの魅力かな。 
特定の場所にしか育たない。 
気候も関係している。 
見つけた時の感激と言ったら、 
言葉では言い表せないさ。 
そういう意味で、トリュフは、美しい女性のようだと言えるかな。 
見たとたんに、恋に落ちる。 
そんな存在さ」 

しかし、そんな白トリュフに、実は大きな問題が訪れようとしている。 
農学者であるグイドさん。 
トリュフの森とその周辺地域の白トリュフの生息状況を 
ここ10年間調べている。 
彼によると、白トリュフの収穫量は 
ここ10年で半分ほどまでに落ちてしまったという。 
土地開発などで、白トリュフの生息できる土地が 
汚染されていることや、 
トリュフハンターの増加等が原因であると彼は推測する。 
農学者グイドさん「10年前、ハンターたちは、 
毎日約500グラムものトリュフを見つけていた。 
しかし、今は、良くて1日50グラム程度、 
ときには全く収穫のない日もある」 

白トリュフには、ある謎がある。 
白トリュフ狩りはここ1世紀ほど行われおり、 
値段も高く人気があるが、 
どういうわけか、シイタケのように培養ができない。 
研究者もこの謎だけは解明できないという。 

トリュフの森が、10年前の状態に戻り、 
再びトリュフにとって生息しやすい環境を取り戻すこと。 
これが白トリュフを見つけ続けられる唯一の道。 
時間と自然の力に頼るしかない。 


(CBC The World This Weekend  December 6 配信分より) 


松茸やトロやカニよりも高価な白トリュフ。 
私は食べたことはありません。 
おいしいんでしょうか。 

環境の変化や乱獲が白トリュフにまで脅威を与えているんですね。 
日本へ入ってくる量も将来的に減ってしまうのでしょうか。 
そういえば、クロマグロも日本人が高く買ってくれるということで 
世界中で乱獲が問題になっており、 
捕獲量が制限され、 
日本への輸入量が減るのではと言われています。 

ミシュラン東京で星の数でパリを上回り、 
名実ともに「食の首都」となった日本。 
しかし、肝心の高級な食材がなければ、 
そんな輝かしい名誉もすぐに消え失せてしまうかもしれない。 
それ以前に、 
日本の食料自給率は40%という危機的な数字がある。 
食糧のほとんどを海外からの輸入に頼っているというのが 
日本の食の現実。 
他国との関係が悪化し、 
食料を売ってくれなくなったら、 
たちまち日本人が餓えてしまいかねない。 

ほんの数十年前までは、 
食料自給率は70%台でした。 
日本の農業を「復活」させ、 
かつてのように国産食材をより気軽に簡単に手に入るようにすること。 
こうして初めて日本が本当の「食の首都」になれるのではないでしょうか。 

2008年12月4日木曜日

デンマークの職業訓練プログラム

POD CASTで聴くワールドニュース第23回。 

この間のGuardian Weekly Pod Castのニュースで、 
日本の出生率低下に関する特集放送がありました。 
「日本の労働者は働きすぎ。 
配偶者を見つける時間もなく、 
見つけても、夫婦で一緒に過ごす時間をほとんど持てない人が多い。 
企業は、残業を減らし、社員が自分の時間をもっと持てるようにすべきだ」 
とあるイギリス人コメンテーターが言っていました。 

しかし、この自分の時間をもっと持てるということが 
現実のものとなるかもしれません。 
最近の、金融危機による、特に自動車業界に多く見られる、 
非正規雇用者リストラの動き。 
正社員にも、残業を減らすよう命じる会社が増えてくるなど、 
正規労働者にもリストラの波が 
押し寄せてくるのではという風潮が見られます。 

今の日本の失業率が4%台。 
この数字が5%や6%台に上る可能性も否めないところだと思います。 

しかし、この世界的金融危機による失業危機の時代にも、 
失業率がわずか1%代を維持している国があります。 
デンマークです。 
ノルウェーやフィンランドなど、北欧の国は福祉の先進国と言われ、 
中でもデンマークは雇用に関して手厚い策を政府がとっています。 

この、EU内でいちばん失業率が低く、 
多くの国がその政策を研究するデンマークでの 
労働福祉政策に関するリポートがありましたので、 
取り上げさせていただきました。 

英BBC News Pod から。 


ちょい長いです。 


'Flex-Security' 


ヨーロッパで失業率の一番低い国デンマーク。 
イギリスをはじめ、多くの国が、この国の雇用政策に注目している。 

BBCの記者が首都コペンハーゲンで取材した。 

デンマークで労働者を解雇するのは、 
他のヨーロッパの国々同様、簡単ではない。 
しかし、実際に職を失ってしまった場合、 
失業保険として、 
毎月£1,600(約22万6千円)もらい続けることができる。 
これは、世界でもトップレベルの金額。 
ただし、もらい続けるには、ある条件がある。 


失業者は、国の職業訓練対策に参加しなければならないのだ。 
しかし、この失業者らが無料で参加できる職業訓練プログラムこそが、 
デンマークの失業率を低く抑える秘訣なのだ。 

職業支援訓練係として働くハンソンさんに話を伺った。 
「失業者が特別なスキルを得るための訓練や、 
ビジネスマンとしてのマナーを学ぶ講座などを担当しています。 
ときには、アルコール中毒者の治療にも参加します。 
訓練施設には、運動場もあり、 
ここでメンタルヘルス対策や、 
体重を減らすためのトレーニングなどもできるのです」 

この施設で、他の業種でもすぐに即戦力として仕事を始められる人材になれるよう、 
綿密にプログラムされた訓練を受けられるのだ。 

ただ、この訓練施設で訓練を終え、 
いざ企業への就職面接の際に現れなかったり、 
1年に2度以上会社を辞めた人は、 
この職業訓練プログラムには参加できなくなる。 

ハンソンさん「訓練を受けたからには、きちんと社会に出て 
働いてもらわなければなりません。 
そうでなければ、当然制裁があります。 
企業はどんどん技術力の高い労働者を求めて来ています。 
我々もその要求にこたえられるよう、 
レベルの高い職業訓練プログラムの提供に努めています」 

イラク出身のアラ・フセインさん。 
デンマーク国籍を取得した、 
資格も持つ技術者である。 
彼も職業訓練プログラムを受けている。 
デンマークの企業風土や労働習慣などに 
すぐに溶け込めるようにするためだ。 
来週から会社勤めとなる予定。 
フセインさん「どのようにデンマークの人々とコミュニケーションをとって 
うまく溶け込んで働けるようになるか、 
新人がどうやって会社の風土に馴染めるようになるか、 
そんなことを教わってきました」 

このような職業訓練プログラムのおかげで、 
デンマークはEUの中で失業率は最も低い。 
1%代である。 
そしてもちろん、 
デンマーク政府はこのプログラムに多大なお金をかけている。 
毎年の歳入のうち4,5%もの額のお金を福祉に費やしている。 
ちなみにイギリスは1%。 
福祉政策に非常にお金がかかっている。 

そしてそれゆえに、政府のこの政策を批判する人も多い。 
「このような労働市場におけるセーフティーネットの過度な充実は、 
就職するために自ら努力をしようとするという 
インセンティヴを奪ってしまうことになりかねない。 
いわゆる一種のモラルハザードだ。 
まず失業中の手厚すぎる給付金を減らすことは必要であると思う」 
デンマークのシンクタンクで働くルービンさんはこう述べる。 
デンマークの労働者たちは、 
政府の職業訓練システムなどの手厚い失業対策に「甘やか」され、 
一生懸命職探しをしよう、 
職に就けるよう自ら研鑽しようという意思を 
なくしてしまっていると彼は考えている。 

一方このシステムを支持する労働大臣、 
フレデリックソンさんはこう述べる。 
「この職業訓練システムを通し、 
多くの人々が様々なスキルを身につけ、 
労働市場で価値ある人材として巣立っていった。 
他のどんな国にもないシステムだ。 
もちろん、非常にお金はかかる。 
しかし、目に見えていい結果が出ている」 

ある労働者がまったく別の業種へ移って働くというのは、 
ここデンマーク以外では非常に難しいことであろう。 
これほど労働者を手厚く保護・支援・訓練する政策をとるのは非常に難しく、 
他の国はこれをただ参考にしたり、 
一部のシステムを取り入れてみるだけというのが現状である。 


(BBC News Pod December 3 配信分より) 


社会福祉政策が非常に進んでいるデンマーク。 
この職業訓練システムは、 
日本も見習うべき点が大いにあるかもしれません。 
以前総理大臣だった安倍氏が「再チャレンジできる社会」 
という発言をしていましたが、 
デンマークで実施されているこのシステムにより 
まさしくこれが実現されていると思います。 

ただ、これだけの社会福祉システムを実施するための財源が 
どこにあるかと聞かれれば、 
答えられる人はいないというのが現状だと思いますが… 
実施するには大増税は免れないでしょう。 
実際、デンマークの労働者は、 
給料の約半分が税金などで消えてしまうと言います。 
しかし、生活に困るということはないようですが。 

日本では、20代前半にある企業に就職し、 
転職せずに一生そこで働き続けるのが 
給料面や福利厚生面などで1番メリットが大きいと 
言う専門家が未だに多くいます。 
長く続いてきた年功序列や終身雇用システムの名残でしょう。 
一方、デンマークでは、労働者の平均転職回数は、 
生涯で6回。 
中には、50回も転職を繰り返した人もいるといいます。 
また、平均勤続年数も約8.3年だそうです。 
これは上記の失業中の手厚い(手厚過ぎるほどの)金銭支援や、 
職業訓練システムなど、 
失業者を放置しない政策による結果であると思われます。 

このような状況を良いと思うか、 
それとも日本の伝統的な雇用態勢に合いかねるので 
ただ参考とするのにとどめるべきか。 
政治家の皆さんにじっくり考えてほしいところです。 

2008年12月1日月曜日

ミニバン輸送サービス

PodCastで聴くワールドニュース第22回。 

インドで発生した同時多発テロ。 
相変わらず英米加のニュースはこの事件を中心に放送しています。 
BRICsの一つとしての成長に陰りの見えかかったインドに更なる混乱を招くことは必死です。 

ちなみに、アフリカにも、インド以上に政治的混乱が見られる国が。 
ジンバブエです。 

このジンバブエと南アフリカを結ぶある輸送ビジネスが注目されているとのことです。 

というわけで、今回は南アフリカから。 


英BBC Business Dairyより。 


政治及び経済的危機にあるジンバブエ。 
最近のコレラの蔓延がこの国を更に追い込む。 
インフレ率は230millionパーセント(2億3千万パーセント)。 
50万ジンバブエドルは、アメリカドルにしてわずか30セント。 
この札束いっぱいの50万ジンバブエドルのお金で 
パン1斤の半分も買えない。 
政治では、与党と第一野党との対立が長く続き、 
安定政府の成立する見込みもない状態。 
現大統領であるロバート・ムガベに対する国民の不信感は強い。 
大統領・与党への孤立政策を訴える政治家も国内にいるほど。 
しかし、孤立政策は、他国に住む親族からの 
金銭援助や食料・薬品等の供給路を経つことも意味する。 
これらの援助の多くは、南アフリカからやってくるといい、 
南アフリカからジンバブエへ物資を送るビジネスが活況だという。 

BBCの記者が南アフリカの首都ヨハネスブルクで取材をした。 

ここは、南アフリカの首都、 
ヨハネスブルクのある「パークステーション」。 
ジンバブエからの出稼ぎ労働者を乗せたバスが次々と到着する。 
しかし、そこから少し離れた箇所に、 
もう一つの重要な「パークステーション」がある。 
ジンバブエからの出稼ぎ労働者が、 
故郷の家族へ物資を送るのを請け負う車がたくさん停まっているのだ。 
約20台ほどのミニバンが、 
「ジンバブエ行き」の看板を出して利用者を待っている。 
何台かのミニバンは、 
すでに食料や石油や電化製品の入った段ボール箱がいっぱいに積まれている。 

ジンバブエでは危機的状況が日増しに深刻になっている。 
南アフリカで働くジンバブエからの出稼ぎ労働者が 
故郷へ物資を送る唯一の確実の方法が、 
このミニバン輸送なのだ。 

一人のミニバンドライバーにインタビューしてみた。 

ドライバー「ジンバブエは危ない状況。 
出稼ぎ労働者はそう頻繁にジンバブエへ帰ることはできない。 
物資を送るために私のやってるような 
ミニバン輸送を使うジンバブエ人は増えている」 

記者「このミニバン輸送の仕事をどこで知ったのですか?」 

ドライバー「求人広告で見つけたんだよ」 


この「ミニバン輸送」サービスは決して安くない。 
小さな段ボール一個を輸送するだけでも$50(約五千円)かかる。 
ミニバン輸送のドライバーは、現金の「輸送」も請け負う。 
ジンバブエでは、銀行を使った送金が農村部では不可能だからだ。 

この「ミニバン輸送」サービスを二年間使っている 
ある塗装工の26歳の男性に話を伺った。 

男性「毎月家族に会いにジンバブエへ帰ることは難しい。 
ミニバン輸送は便利なサービスだ」 

記者「故郷ジンバブエであなたの家族は 
どんな暮らしをしているんですか?」 

男性「暮らしは大変だ。 
まず、お金がない。 
お金があっても、今度は何も売ってない」 

記者「ミニバン輸送サービスがなければ、 
故郷の家族は生きていけないですね…」 

男性「正直最初はこのミニバン輸送サービスは信用できませんでした。 
本当に家族に物資や現金を届けてくれるのか不安でした。 
ただ、故郷の家族はきちんと受けとってるということが分かり、 
安心して使っています」 

今も多くのジンバブエ行きのミニバンが「パークステーション」に列をなす。 

ジンバブエでの危機的状況が改善されない限り、 
この車の列はずっと続くことであろう。 


(BBC Business Dairy November 28th 配信分より) 


与党と野党との対立がなかなか解消されないジンバブエ。 
今年の6月頃は、イギリスのニュースでこのジンバブエの危機が毎日のように放送されていました。 

一方、南アフリカはアフリカ大陸で最も経済・産業発展が進んでいる国の一つ。 
BRICsの次にくると言われる経済新興国群、いわゆる‘VISTA’にも南アフリカは入っています(Vietnam、Indonesia、SouthAfrica、Turkey、Argentine)。 
再来年にはワールドカップも開催されることもあり、建設ラッシュにも沸くこの国は、 
出稼ぎにはもってこいの国なのかもしれません。 

ただ、やはり出稼ぎ労働などしなくてもいいように、 
ジンバブエに政治の安定が早期に訪れるのを期待したいものです。 
ちなみに、アフリカ人の英語は非常に聞き取りにくかった… 

今回は時間がかかりました。。。 
ちなみに、 
ロシア人やイタリア人の話す英語も 
癖があって非常に聞き取りにくいです。 

ただ、様々な国の人が訛りはあっても英語を話すのを聴くと、 
英語は本当にGlobal Languageなんだなと実感させられます。