2011年6月15日水曜日

Slave Contract

英国BBC Global News Pod Cast より。

‘the darker side of Korean pop stars’

ヨーロッパで初めてのコリアンポップミュージックのコンサートが最近催された。
チケットはソールドアウト。
聴衆は再びの開催を求め、興行側は、次回のコンサートを計画している。
既にアジアで一世を風靡している’K-POP’。
これは南朝鮮(韓国)ブームの最前線である。
南朝鮮(韓国)のミュージック、ドラマや映画は今や多くの国で受け入れられている。
しかしながら、このK-POPの勢いの陰には、
なかなか語られることのない、「苦しみ」が潜んでいる。

BBCの記者が首都ソウルで取材した。

チップ?何のチップ?コンピュータの集積回路のチップ?
それが南朝鮮(韓国)のイメージ?
そんなのもはや古いっすよ。
南朝鮮(韓国)の最新の輸出といえば、ポップスター。
さまざまなK-POPグループが、南朝鮮(韓国)のサッカーワールドカップスタジアムを
満員の聴衆で埋め尽くす。
日本やアメリカのアーティストさえも凌ぐ勢い。
今年初め、南朝鮮(韓国)の人気ポップアイドル、レイさんは、
米国国務長官のヒラリー・クリントンやアップルCEOスティーブ・ジョブス氏を抑え、
米TIMEマガジンに2011年の最も影響力のある人物として、読者に投票された。
そして先週、ついにK-POPがヨーロッパに進出した。
欧州初のK-POPコンサートはパリで行われた。
しかし、この輝かしい躍進の陰に、K-POP産業が隠したい、
darker side(隠された闇)がある。

レインボウ。
7人組のPOPグループ。
皆があこがれる、アイドルの頂点に上り詰めた彼女たち。
しかし、実は、彼女らの親たちは、心を痛めている。
それは、彼女たちの給料の低さに、である。
彼女らの所属事務所は、給料について、詳しい交渉をしようとしてくれない。
K-POP産業の闇であり、弱点。
それは、アイドルたちとの契約が、いわゆる’Slave Contract’(奴隷契約)によって
成り立っているということ。
大した報酬もなしに、若い「訓練生」たちに、長期間契約を結ばせる。
ここ数年、この「闇」に目をそむけることのできない、
法廷判決や、南朝鮮(韓国)公正取引委員会が動きを見せている。

南朝鮮のEntertainment Minister(興行大臣?)のイム氏はこう語る。
イム氏「ここ最近、この傾向は変わってきている。
いくつかの法廷での判決や公正取引委員会の勧告などを受け、
所属事務所がアイドルたちに、活動に見合った報酬を払おうという動きが出てきている」

しかし、彼の発言もむなしく響くのみ。
実際には何も変わっていない。
K-POPバンドのプロデュースには、多額の金がかかるのが一つの理由。
何年にもわたるダンスや歌の訓練、コスチューム、PR活動、現地での滞在費等。
そして、もうひとつの闇の存在が問題をよりややこしくする。
音楽配信業界に勤めるチョウ氏はこう語る。
チョウ氏「K-POPグループの報酬についてなのですが、
これがここ南朝鮮(韓国)では危機的と言えるほど大変なことになっている。
もちろん報酬額はグループメンバーには決められず、配信会社が決めるのでもなければ、
プロデューサーが決めるのでもない。
それは、コリアミュージック業界のカルテルによりきめられているのが現状なのです。
このカルテルのせいで、アイドルグループへの報酬がどんどん下がっていく。
ほんの少しの金額でも落としたがるのが、カルテルでの取り決め。
K-POPミュージックは、アジアを超え、世界中に広まろうとしている。
それは確かなこと。
しかし、彼らの報酬・給料の悲惨な状況は語られることなく、ファンたちは彼らに声援を送り続ける」

南朝鮮(韓国)政府がこのような状況でもK-POPの海外進出を推し進める背景には、
やはりそこにも金が絡んでいる。
昨年、K-POPによる南朝鮮(韓国)の収入は、20億ポンド(約2600億円)。
海外でのK-POPによる収益伸び率は160%。
K-POPがこのまま人気アイドルグループの隆盛が続くのか、
それとも「奴隷契約」の問題が表ざたになり深刻化し、彼らが消えていくのか、
われわれは知る由もない。

(BBC Global News 6月14日配信分より)

2011年6月1日水曜日

kamikaze pensioners

再び震災関連ニュース。
BBC Global Newsから。

'kamikaze pensioners'

200人以上の日本のpensioners(年金生活者)たちが、
福島原発での危険な作業に立ち上がろうとしている。
彼らは皆60歳を超えた、熟練した原発作業のエンジニアたち。
彼らは言う。
未来のある若い者たちが原発で死の危険性もある放射能汚染の被害に遭ってはならないと。

東京でBBCの記者が取材した。

ヤステル・山田氏。彼が今テレビ界の注目を集める。
彼は決心した。福島の原発での危険な状況をただメディアを通して見ているだけではいけないと。
72歳の彼は、福島原発での危険な作業に従事することにしたのだ。

記者「ここにたくさん紙が積んでありますね」
ヤステル「FAXとE-mailです」
ここ数週間、ヤステルは昔の同僚にコンタクトを取っていた。
これまで、200人以上の同僚が、skilled-veterans' core(熟練ベテラン集団)プロジェクトに
加わることに同意した。
福島原発で働く若い作業員に代わり、ヤステル集団が作業をするというプロジェクトだ。

記者「なぜ若い作業員でなく、あなたがたのようなベテラン作業員が必要だと?」
ヤステル「なぜなら、年を取った人間ほど、放射能汚染の影響を受けにくいからだ。
私はもう72歳。あと13~15年ほどしか生きられないであろう。放射能のせいで癌になったとしても、
私は後残り少ない命。一方若者は、がんになるとまだ長い人生が台無しになってしまう可能性がある」
記者「ほんとに勇敢な方だ。あなたは、kamikaze pensionersですか?(pensioners=年金生活者)
これはkamikazeミッションじゃないですか」
ヤステル「いやいや、我々はkamikazeではない。kamikazeというのは、自分の命を捨てる覚悟のできた人間たちだ。kamikazeは、死の危険を恐れず国を守るため、飛び立っていった。しかし我々は、戻ってくる。我々は、使命を遂げなければならない。しかし、死ぬつもりはない」

ヤステル集団の強い意志は、日本を守るという決意から発している。
彼らの世代で、日本が強力な経済国家となった。
彼らはこれまで原発のベネフィットを享受してきた。
電車が動く、電気を使える、快適な生活を送れるのは、原発のおかげであった。
政府は、ヤステルたちの申し入れをに対し、真剣に検討するとしている。
福島原発をシャットダウンするのは早くて1月、石棺化するのは数年かかると言われている。

一方こちらは、被災地のある喫茶店。
ミチオ・イトウ氏が、原発作業員らにコーヒーを振舞う。
イトウ氏も年金生活者であり、別のプロジェクトを推進している。
彼は、元々原発エンジニアではない。
教師をやっていた。
イトウ氏「わたしは別に特別なことをしているとは思はない。多くの人が私と同じ気持ちになっていると思う。問題は、実行に移せるか、それともただ指をくわえて見ているだけか。もちろん、実行に移すには、ガッツが要る。しかしそうすることによって得られるものは計り知れないほど大きい」

山田氏の話に戻る。彼は、かつて原発で働いていた時に着ていた作業着に袖を通した。
まだサイズはあっているそうだ。
ヤステル集団は、今、政府からの返答を待っている。
「最後のミッション」を始めるために。

(英BBC Global News 5月31日配信分より)