POD CASTで聴くワールドニュース第26回。
第23回分でデンマークの労働政策に関する話題を
書かせていただきました。
で、今回は同じヨーロッパの一国、フランスの労働問題の
POD CASTを見つけました。
少し興味深い話題でしたので、
取り上げさせていただきたいと思います。
加CBC The World This Weekend より。
'Keeping A Job or Keeping Days Off ?'
金融危機のこの時期、多くの国で人々が職にしがみつこうと懸命になっている。
しかし、フランスでは、多くの労働者は休日を多く保つことに懸命になっている。
最近、フランスの国会では、
企業に日曜日の営業を認めるかどうかが議論の的になっている。
しかし、フランス国会でのこの動きに、
多くの労働組合や自営業者、
その他多くの「休日の休息はフランス国民のライフスタイルに欠かせない」
と信じて疑わない人々が抵抗している。
CBCの記者のフランスからのリポート。
私が今いるのは、日曜日のシャンゼリゼ通り。
多くの観光客や買い物客でにぎわっている。
しかし、この世界屈指のショッピング通りに並ぶ多くの店は、
営業していない。閉まっている。
フランスの法律により、観光スポットにある店や、
レクレーション施設、文化施設などしか
日曜日の営業を許されていないのだ。
2年前、老舗のバッグブランド、ルイ・ヴィトンは
パリ支店のビルの最上階に美術館を造った。
理由は、日曜日に営業できるようにするため。
昨年シラク氏に代わり、フランス大統領に就任した、
ワーカホリックな新大統領、ニコラ・サルコジ。
彼は、日曜日に営業できないと言うフランスのこの特異な法律を、
いつも皮肉っていた。
サルコジ「シャンゼリゼ通りの一方は、
観光関連施設があり、
多くのお店が日曜も営業している。
しかし、道路を挟んだ反対側の通りは、
日曜日はほとんどの店が閉まっている。
滑稽な光景だ。
観光客も不思議に思うだろう」
フランス政府は、この現状を変えるために動き出した。
パリ、リヨン、リール、マルセイユの四大都市に関して、
全ての店に日曜日の営業許可を与える法律を通そうとしているのだ。
自営業者や、多くの労働組合は、
この法律を歓迎していない。
ある組合のメンバー、シャレーさんはこう話す。
「全ての店に日曜日の営業許可を与えると言うこの法律には、
日曜に労働者を雇う金銭的余裕のないちいさな店を潰したいという
裏の意図が隠されている。
アメリカのような競争社会にしたいんだ。
本当にこの法律が通ってしまえば、
数千人が職を失うだろう」
この法律に反対の人々は、
小さな店と雇用を守りたいというだけではない。
誰もが日曜は休みというこの習慣が好きだと言うのも反対する理由なのだ。
日曜日は営業許可を与えないと言う100年も前から続くこの制度。
別に、宗教的理由からこの制度ができたのではない。
1906年に政教分離政策がとられた際、
この制度もできた。
産業革命以来、フランスの労働者は、
1日12時間労働を、毎日休みもなくこなしていた。
疲弊しきっていた労働者たちを考慮し、
日曜は誰もが休みというこの制度ができたのだ。
この制度のおかげで、
「ファミリーサンデーランチ」という習慣が広まった。
日曜は必ず家族みんなで外食に出かけると言う、
家族団欒の時間である。
シャンデリゼ通りでタバコをふかしていた60歳のコレットさん。
彼は、今は時代が変わってしまったと言う。
コレットさん「『サンデーランチ』をする人は今やいない。
私はパリの郊外に住んでいるが、
日曜日は、いつも暇で、一日することがない。
だから、日曜はパリにやってきて、美術館巡りをする。
美術館は日曜でも開いているからね。
美術館巡りついでに、ショッピングでもしたいと思うが、
お店はほとんど閉まっている」
政府の商業政策を担当する秘書官、ルーク・シャタルさんはこう語る。
シャタルさん「この法律は、国民に自由を与えるということなのだ。
日曜日は誰もが店を開けなければならないと言っているわけではない。
営業したい人は、やればいいと言うことなのだ」
再びシャンゼリゼ通り。
今度は、アパレルショップで働く30歳のケヴィン・ドヴィーさんに
話を聞いた。
ドヴィーさん「私には小さい娘がいる。
日曜日は必ず娘と過ごす。
このかけがえのない日曜日という休日を、
働いて過ごすなんて。
たとえ、給料を多くもらえるとしても日曜日は働きたくない」
アメリカやイギリスの人々にとっては、
多く稼ぐために多く働くと言うのが常識だろう。
しかし、多くのフランスの人々は、
休日を犠牲にしてまで働くと言うことはおかしいと感じているようだ。
日曜にすべての店に営業許可を与えると言うこの法律。
今後の推移を見守っていきたいところである。
(CBC The World This Weekend December 14 配信分より)
昨年5月に就任したサルコジ大統領。
保守主義者、かつ自由主義者とされ、
さらに親米派の政治家。
少し前までのアメリカのように、
規制緩和・自由競争・小さな政府路線をとり、
フランスの労働者もアメリカの労働者のように、
仕事に意欲を持たせるようにし、
競争力のある企業を多く持つ国家にしたいとの意図が見え隠れしています。
フランス人というのは、「日曜日に働けない」制度がることもあり、
世界で一番労働時間が短いんだそうです。
しかし、フランスはG8からロシア、カナダ、イタリアを抜いたG5のメンバーでもあり、
OECDの加盟国でもあり、
一流の経済国家です。
労働時間が短いのになぜこれだけの経済力を保てるのか。
それは、効率性によるとのことです。
フランスの労働者は、世界で一番効率のいい働き方をするんだそうです。
「時間内に仕事を終わらせるにはどうすればよいか」ということを
常に考え、無駄を省いて省いて仕事に取り組む。
労働者のこのような姿勢が、短時間労働経済国家につながっているんだそうです。
一方、ヨーロッパでは「働き蜂」として有名な日本の労働者。
日本の労働者は、「仕事が多いときは、とりあえず残業して終わらせよう」
と考える傾向が強いようです。
仕事量が増える=残業という構造がすぐに思い浮かんでしまうようで、
なかなか「どうすれば時間内に仕事を終わらせられるか」という
効率性を考えるところにはいきつかない。
「一生懸命精を出して働く」のが日本人の美徳の一つであると言うのも
理由であるかもしれません。
会社を19年連続の増収増益へ導いたトリンプの社長、吉越浩一郎氏。
この偉業の秘訣は、「残業ゼロ政策」にあったと言います。
彼は、「就業時間内の社員の集中力を高めることで
全社的な仕事の効率が上がり、
従来以上の価値を生み出す投資になる」
と「日本の論点」で書いていました。
長時間労働による自殺者も絶えない日本。
フランスや吉越さんの考えに基づき、
働き方を根本的に変えることも考えなければならないと思います。
ちなみに、約2年前、パリに旅行に行きました。
確かに日曜は美術館などを除き、
どこの店もしまっていました。
確かに不便でしたが、
「いいなー」と感じてしまいました。
精神的にゆとりがあると言うか、焦ることのないと言うか、
そんなライフスタイルを羨ましく思いました…
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