Pod Castで聴く英国のニュース 第46回。
今回は、富士山とともに、日本を代表する自然の景色、
さくらについてです。
英BBCで、日本の花見を取材したリポートがありました。
日本の伝統行事ともなっている花見が、
欧州でどのように報道されているか、
ご興味があれば、お読みになってみてください。
英BBC From Our Own Correspondent から。
‘Cherry Blossom in Spring’
春の桜の花ほど、気持ちを高揚させ、かつ落ち着かせてくれるものはあるだろうか。
多くの日本人がこう感じている。
桜を見、その木の下で食べたり飲んだいるするという花見(cherry blossom viewing)は、
日本では国家の伝統行事のようになっている。
日本各地で花見の光景が見られる今。
しかし、戦後最悪とも言わるeconomic crisis(経済危機)を背景に、
今年の日本の花見には少し違った光景がみられる。
BBCのリポーターが東京で取材した。
日本の冬は、寒く、長い灰色の時期である。
そして、温かな春は一層待ち焦がれるものである。
3月上旬になると、ただの黒いだけの木に見えた桜に変化が表れ始める。
そしてその数週間後に、一気に開花するのである。
その花のあまりの元気良さに、
桜並木や桜の木の多く植えてある公園は、
まるでピンクと白の雲に覆われているかのようになる。
日本の首都である東京は、
他のどの都市よりも多くの人口を抱える。
そしてこの多くの人々すべてが、春の桜を待ち焦がれている。
東京の桜の名所である上野公園では、あまりの人の多さに、
何が何だか分からないほどになっている。
アマチュアの写真家はあちこちにいて、
携帯で淡いピンクの花を撮っているものもいれば、
友人を桜をバックに撮っている人もいる。
日本では季節ごとの自然の移り変わりを祝う習慣がある。
秋の紅葉の時期や、初夏の田植えの時期などである。
そのなかでも、桜の時期の花見は、
とくに大事にされている。
過去何世紀にもわたって、日本のaristocrats(貴族・皇族)たちには、
桜の時期になると、その木の下を歩き、
もしくは座って短歌を詠むという風習があった。
blossom appreciation(桜の花をよく観察する)ということが
日本人にとって、伝統的な文化であり、
ここに'mononoaware(もののあわれ)'が一番よく反映されている。
mononoawareは、移りゆく自然のなかに美を見出す意識のことである。
最近では、毎日の天気予報の後に、ある「便利情報」が流れる。
‘cherry blossom front(桜前線)’のことである。
気温が上がるにつれ、日本列島を南から北へと移動する、
花の「前線」である。
日本で最初の桜前線は、1月初旬に沖縄にやってくる。
首都東京では、気象庁の職員が、
靖国神社の桜を毎日注意深く観察する。
ちなみに、この靖国神社は、
日本の政治に関連して、よくニュースで登場する。
日本の天皇のために、特に太平洋戦争で戦死した、
約250万人の御霊のために建てられた、メモリアルである。
太平洋戦争時のA級戦犯も祀られているところで、
日本の首相が参拝する度に、話題になる神社である。
戦地へ赴く兵士は、しばしば美しくもはかない桜の花にたとえられる。
「靖国で会おう」これが戦地へ赴く兵士の会話の中でよく出てきたという。
靖国神社の中に、フェンスに囲まれた、特に珍重されている桜の木がある。
この桜に5つ~6つの花が咲いているのが確認されると、
東京の桜の季節が正式に始まったということが宣言される。
そして、数週間の楽しい花見の季節が同時に始まるのだ。
reserving task(場所取り)は、花見ではとても重要な仕事だ。
会社では、新人がこの場所取りの任務を与えられる。
日本では、桜のこの時期に学生が社会人になる。
立派な建物での入社式を終え、一斉に社歌をうたった後は、
ブルーシートを持って桜の名所へと駆り出される。
今日も朝から新入社員ぽい若い男女がブルーシートを敷き、
段ボール箱の机を用意しているのを見た。
今年の花見は、戦後最悪と言われる景気停滞期を背景に行われている。
多くの製造業が苦境に立ち、
特に車や電機産業は輸出の落ち込みによる打撃が厳しい。
伝統的な日本型経営に陰りがさし、
いわゆる大企業でほとんどの新社会人が新たな生活を始めるという過去のスタイルは
一般ではなくなってきている。
政府による企業名公開のリスクがあるにもかかわらず、
内定取り消しを行う企業も多い。
花見にいる新入社員へのインタビューで一番多く聞かれた言葉は、
‘I'm lucky to have a job.’(職を得られて幸せです)だった。
(BBC From Our Correspondent April 18 配信分より)
経済停滞といっても、
やはり花見はなくならない。
時代がかわっても、花見で新しく仲間になったメンバーを本当の意味で迎え入れるという習慣が続いているというのは、
やはり私たち日本人が桜の花に特別な思いを抱き、
それを心の奥底でずっと忘れずにいるからであると思います。
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